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2008年5月31日 (土)

ブゾーニの美学2

Busoni01_7

Reinhard Ermen, Ferruccio Busoni ( Reinbek bei Hamburg: Rowohlt, 1996 ), s.76. より転載

ブゾーニの「哲学的センスの良さ」ないし「男としてのかっこ良さ」が台本の中に充分表れているオペラ《トゥーランドット Turandot》の一場面を、ご紹介しましょう。古代中国皇帝の一人娘トゥーランドット Turandot は、求婚者カラフ Calaf(実は身分を隠した西国の王子様・ブゾーニの自己投影)に3つの難題を出します。姫の出す難題に答えられなかった今までの求婚者たちは死刑に処されたのですが、カラフは3つの難題にことごとく正解し、すっかりトゥーランドットの心を捉えます。

トゥーランドット・第1の問い
「地を這い(はい)、天に向かって飛ぶ。暗闇を探り、光を放つ。過去を振り返り、未来のために努める。古きを守り、新しきに目覚める。思慮深いが、しばし逆らう。健やか(すこやか)で、しかも病んでいるものは何?」

カラフの答え
「地を這い、天を飛ぶ。暗闇を探り、光を放つ。古きを守り、新しきに目覚める。自らの世界を織りなし思慮深いが、しばし逆らう。それは、人間の分別。」

トゥーランドット・第2の問い
「常に変わらず、しかし常に変化を続ける。今日命じられたのに、明日は禁じられる。ここで褒められたのに、あちらでは罰せられる。初めに守られたのに、後にあざけられる。黙っているが、なくてはならぬ掟。なくても困らず傷もつかないものは何?」

カラフの答え
「変化しながらも存続し、空っぽの概念ながら習慣として生き続け、ひとたび用がなくなれば、物笑いの種となる。それは、道徳。」

トゥーランドット・第3の問い
「時の根から、人間を支える幹から、習慣という枝から、この上なく美しい花が咲く。全ての人が惹かれる(ひかれる)が、それを持つ者は少ない。霊感を授かった者だけが、それを治め、全てを守り、全てを変え、人の世を明るくするために天から与えられたものは何?」

カラフの答え
「時の根から、人間を支える幹から、習慣という枝から咲いた、この上なく美しい花。全ての人が出会うけれども、一握りの人だけに聴くことが出来、感じることが出来、考えることが出来、見つめることが出来るもの。これこそ天の恵み、大地の口づけ。それは、芸術。」

拙訳ゆえ、もっと良い訳をご存知の方はご教示ください。私がブゾーニの《トゥーランドット》を初めて観たのは、1988年のことです。何度も観たプッチーニの《トゥーランドット》を始めとする、他の陳腐な脚本の問答に比べ、何と含蓄ある問答だろうか!と感銘を受けました。それ以後ますますブゾーニの大ファンになり、今日に至っている次第です。ただし、2番目の道徳に関しては、2006年1月8日以後、ブゾーニの台本よりも良い表現がある、と思うようになりました。

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